【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
「髪を梳いて差し上げましょうか。今日はお天気がいいですからお庭に出てみてはいかがですか?」
「……そんなことをしてなにになるの」
様子をうかがいつつ話しかけるフィオラに、やっと反応したカリナの言葉はそれだった。
ドレッサーの前に座って髪をどう結おうかと毎日嬉々としていたカリナが、結婚の話をされた日から肌や髪が荒れ放題になっている。
普通は婚約が決まれば手入れを怠らないようにするものなのに。
「フィオラだって他人事じゃないのよ? あなたも一緒にローズ宮に行くんだからね」
「はい。これからも私はお嬢様にお仕えいたしますので」
フィオラは微笑みながらていねいにおじぎをした。
ブロムベルク家に激震が走ったのは、こんな日が何日か続いたあとだった。
朝、フィオラがカリナを起こそうと部屋に行ったら姿がなかったのだ。
最初はお手洗いにでも行っているのかと呑気に構えていたが、いつまで経っても戻ってこないので捜し始めた。
けれどあらゆる部屋を見て回ってもカリナはどこにもいない。
(……なにかおかしい)
困ったフィオラはシビーユに事情を伝え、使用人全員でカリナを捜索した。
「お嬢様ー! カリナお嬢様ー!」
いくら屋敷の敷地が広いと言っても、手分けをすればたいした時間は要さない。
マルセルとサマンサも加わってくまなく捜したが、カリナは見つからなかった。
「あの……奥様……」
とある異変に気づいたフィオラが悲痛な面持ちでサマンサを呼び止めた。
「……そんなことをしてなにになるの」
様子をうかがいつつ話しかけるフィオラに、やっと反応したカリナの言葉はそれだった。
ドレッサーの前に座って髪をどう結おうかと毎日嬉々としていたカリナが、結婚の話をされた日から肌や髪が荒れ放題になっている。
普通は婚約が決まれば手入れを怠らないようにするものなのに。
「フィオラだって他人事じゃないのよ? あなたも一緒にローズ宮に行くんだからね」
「はい。これからも私はお嬢様にお仕えいたしますので」
フィオラは微笑みながらていねいにおじぎをした。
ブロムベルク家に激震が走ったのは、こんな日が何日か続いたあとだった。
朝、フィオラがカリナを起こそうと部屋に行ったら姿がなかったのだ。
最初はお手洗いにでも行っているのかと呑気に構えていたが、いつまで経っても戻ってこないので捜し始めた。
けれどあらゆる部屋を見て回ってもカリナはどこにもいない。
(……なにかおかしい)
困ったフィオラはシビーユに事情を伝え、使用人全員でカリナを捜索した。
「お嬢様ー! カリナお嬢様ー!」
いくら屋敷の敷地が広いと言っても、手分けをすればたいした時間は要さない。
マルセルとサマンサも加わってくまなく捜したが、カリナは見つからなかった。
「あの……奥様……」
とある異変に気づいたフィオラが悲痛な面持ちでサマンサを呼び止めた。