「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~

1、「白」の名を持つ娘

 ――事の起こりは三カ月前のことだった。

 白く結露した窓を手のひらでこすれば、庭に薄く雪が積もっているのが見える。
 昨夜は妙に冷えると思ったら、雪が降っていたようだ。今はやんでいるようだが、空が灰色の雲に覆われているので、いつまた降りだすかはわからない。
(もう少し積もるかしらね)
 ブランシュは窓の外を見下ろしながらそんなことを考えたが、雪が降ろうが積もろうが、自分にはまったく関係のないことだと思いなおし、窓際から離れて暖炉の前のひとり掛けのソファに座った。
 そして、ソファの横に置かれている読みかけの本を膝の上に置き、続きのページをめくる。
 ここでしばらく待っていたら、使用人が朝食を運んでくる。それをひとりで食べて、からになった食器を廊下に出しておく。昼も、夜も、翌朝も、ずっとその繰り返し。
 邸(やしき)の中を歩くのは許されているけれど、廊下でばったりと母に会おうものなら嫌な顔をされるし、父に会えば無視される。邸の外に出ることは禁止されていて、庭に下りることすら許されない。
 まるでちょっとだけの自由を与えられた囚人のようだと、ブランシュは自嘲した。
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