「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~
(ま、殺されなかっただけましだもの)
 魔力がないと知った途端、父と母は、生まれたばかりのブランシュの存在を闇に葬ろうとしたと聞く。つまり、人知れず始末してしまおうとしたのだ。
 けれど、それを止めてくれたのが今から二年前に他界した祖母だった。
 ブランシュの祖母シャルリーヌは、前王の妹――すなわち、王女の身分にある人だった。
 父の母にあたる人だが、魔術至上主義のシャプドレーヌ家にあって、魔力のないブランシュをかわいがってくれた唯一の人だ。
 ブランシュを閉じ込める両親にも幾度となく苦言を呈してくれ、外の世界を見ることがかなわない孫娘のために、いろいろなことを教えてくれた優しい人だった。
 ――いいこと、ブランシュ。人は魔力ですべてが決まるわけではないわ。人の豊かさは心のありようなのよ。魔力が多くたって心が貧しい人はたくさんいるの。残念なことに、あなたの父親や母親のようにね。
 祖母は腹立たしそうな顔でそう言った後で、にこりと微笑んだ。
 ――だからね、ブランシュ。あなたはあんな風になってはダメ。できることなら、いつでも笑っていなさい。笑っていれば必ずいいことが……幸運が訪れるわ。
 笑っていればいいことがある、というのはシャルリーヌの口癖だった。
 両親に顧みられず、必要最低限の世話係がつけられ、あとは放置されていたブランシュが卑屈にならずに済んだのは、ひとえに祖母の存在があったからである。
< 7 / 22 >

この作品をシェア

pagetop