「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~
 祖母は閉じ込められている孫娘のために、度重なる交渉の末、シャプドレーヌ公爵邸の書庫の鍵を勝ち取った。
 書庫には百年以上前から集められてきた貴重な書物がたくさん並んでいて、その蔵書数は城の書庫にも匹敵するほどなのだそうだ。さらにブランシュのためにシャルリーヌが買い集めた本も加わったため、退屈する暇もないほど多くの本に囲まれてブランシュは育った。
 魔力のない人間に知識は不要と、家庭教師すらつけてもらえなかったブランシュのために、王女として最高の教育を受けて育ったシャルリーヌ自らが教師となった。
 本を読み、祖母に教わり――邸から出られなかったブランシュだが、おかげで、あまり不自由を感じることはなかった。
 ――二年前に、祖母が他界するまでは。
 前日まで元気だったシャルリーヌは二年前のある日、突如として倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
 シャルリーヌがいなくなった後の日々は、まるで星も月もない夜のようだった。
 話し相手がいなくなったブランシュは、ただひたすら本を読んで過ごした。
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