その手で結んで

帰った舞白

深夜
なんだかんだで、もう家についてしまった。
舞白はドアノブに手をかけては離すを繰り返していた。
これでは変人だ。腹を括るぞ舞白!
重く感じるドアを開けて、家の中にはいった。

「ただいま~」
そう言うけど部屋はシーンとして静まっていた。まぁ、寝てるよね。
舞白は靴を脱いで廊下を歩く
開けようとしたドアが勝手に開き、何かが飛び出してきた。
ドンッ
「うっ」
突然の衝撃と、鼻先にあたる胸板。ギュッと何かが体を締め付ける。
「…………ふぇっ?」
舞白は何が起こったのかわからず固まっていると
「遅い」
と、不機嫌な、低い声で翔琉がいった。
「ご、ごめん…………」
どうやら翔琉に抱き締められているようだった。それもがっちりと…………
かなり動揺するも、
『相手は高校生なんだから優しくしなさいよ』
という桃花の言葉を思い出した。
とりあえず翔琉の背中をよしよしとさする。
「はぁー、ズルい」
耳に翔琉の唇が当たりそうなほどの近さで言われ、思わず翔琉の胸板を押しのけた。
「は、離れて、ください!」
頭の中がパニックだった。恥ずかしすぎる。兄弟がいたことないし、どうやって接していいのかわからない。
舞白に押されて離れた翔琉が少し寂しそうに見えた。
「た、ただいま」
と、その顔に何となくいってみる
「…………おかえり」
と、翔琉は不服そうに返した。
このやりとりなんだかくすぐったいな、なんてのんきなことを考えていたら翔琉に腕を引っ張られた。
「来て」
いや、来てじゃない!私疲れてるから!
「ね、ねぇお腹すいてないの?」
と、話を反らしてみる
「食べたから大丈夫」
ですよねー
「え、えっと荷物を置きたいんだけど……」
「あとにして」
なんで!!
「翔琉、お風呂入ってきたら?」
「もう済ませた」
あー、逃げ道がない!!
「今日の学校どうだった?」
「とくになにも、ここ座って」
「あ、うん」
ソファーに座ると、すぐ横に翔琉も座る。
なぜそこ?近くない?
すると、私の肩に頭をのせてきた
珍しい、ものすごく甘えてくるなんて。いつもはツンツンでこんなことなんて一切しないのに。

じーっと翔琉の様子を伺う。
サラサラな黒髪、色白の肌。目を伏せていると長いまつ毛がよくわかる。ほんと綺麗な顔立ちをしているよね。

結局翔琉が腕にしがみついたまま、離れることがなく2時間ほどそのままでいる。
様子を見て何度も離れようと試みたが
「ダメ、離れないで」
と、何度も縋り付かれる。
「で、でもさ…………私もそろそろお風呂入りたいし」
「嫌だ。舞白はすぐに離れる、側にいるって約束して…………お願い」
と、翔琉は子供のような甘い声で言った。
上目遣いに、潤んだ瞳、必死に縋りついて離さない手と、一つ一つの仕草が私の胸を締め付ける。
キューン
ダメ、嫌、とは言えない!!
「わかった。上がったら一緒にいるから!」

約束してしまった。

お風呂からあがって、急いで帰ってくると飛び付いて抱き締められる。
なんだ、これ
ほんとに翔琉か?
わんちゃんかもしれない。
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop