僕の秘書に、極上の愛を捧げます
「では、今日はこれで失礼します。今後は宮田さんにスケジュール調整していただくで良いでしょうか」

「そうだね。直接連絡してもらって構わないので、週次で進捗報告を」

「承知しました。じゃ宮田さん、改めて連絡します」

そう言って役員室を出ていく遠藤に、私は会釈した。
改めて連絡・・って、今ここで調整していけばいいのに。

ふぅ、と思わずため息が出る。
そんな私を見て、専務が苦笑した。

「どうした。遠藤さんは宮田さんの苦手なタイプ?」

「あ、いえ・・そういうわけでは・・」

「僕としては、少しくらい苦手なタイプであってほしいけどね。遠藤さんは仕事もできるし、コミュニケーション能力も高くてバランスがいい。でも、彼が来る度に宮田さんの心が動くようだと、僕は仕事にならないからね」

「え・・」

フッと軽く口角を上げ、専務はデスクに戻る。
その視線が、仕訳けておいたいくつかの郵便物に向かっているのを確かめつつ、私は専務の横顔を見た。

『彼が来る度に宮田さんの心が動くようだと、僕は仕事にならない』

どういう・・意味?
私の仕事が疎かになるということ?

それとも・・。

「・・・・さん。宮田さん? 電話鳴ってるよ」

「あぁ、申し訳ありません!」

急いで電話を取ると、受話器から『翔子か?』と聞こえてきた。

「はい。専務とのお約束の調整でしょうか?」

『今夜、少し時間取れないか? 話がしたいんだ。アポの調整は改めて連絡する』

「大変申し訳ございません。既に先約がございまして・・」

『退勤時間の頃に、ビルの近くで待ってる。50メートルくらい離れたところにカフェがあるだろ? そこにいるから』

ツーツーツー。

私の返事などお構いなしに、一方的に電話が切られた。



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