僕の秘書に、極上の愛を捧げます

Side 恭介

「専務のプライベートですし、そこまで入り込むわけには」

彼女にやんわりと断られた。

「そうか。まぁ、知りたくないのに無理に聞かせるのもね。今日は、このまま帰るの?」

「はい、また明日。失礼いたします」

綺麗に会釈をして、彼女はカフェを出ていく。
その後ろ姿を、見えなくなるまで眺めていた。


今日はシンプルなニットと、やわらかそうな素材のスカート、そしてハイヒール。
肩より長い髪は、邪魔にならないようにハーフアップにしている。

昨日のパンツスタイルも、よく似合っていた。

本当に気遣いは細やかなのに、肩に力が入っていなくて、必要以上に相手に踏み込んだりもしない。
近くにいるだけで、雰囲気が和らぐのだ。

彼女のような女性に、初めて出会ったと思う。

社長には、着任にあたって秘書は不要だと伝えたのだが、絶対に必要な人材だからと押し切られた。

『成宮だから彼女を譲るんだ。じゃなきゃ、ずっと俺の秘書でいてほしいくらいだ』

あの社長にそう言わせるのだから、よほど剛腕なのかと構えていた。
でも、全然違った。

ほんの数日で、彼女の存在が自分の中で膨らんでいくのが分かったけれど、それを、自分の中でどう受け止めればいいのか戸惑った。

上司と部下の関係。
線引きも必要だし、そこで踏みとどまらなければ。

そう考えていたのに。

今日、ランチに出る前に転びそうになった彼女を支えた時、ふわりと漂った香りに完全に気持ちが振り切れて、そのまま抱きしめてしまいそうになった。



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