僕の秘書に、極上の愛を捧げます
役員室のドアを開けると、そこには社長もいて専務とふたりで話をしているようだった。

「お、宮田もういいのか? 貧血で倒れたって聞いたけど」

「あ・・はい。ご心配おかけして申し訳ありませんでした」

「おい成宮、もっと気遣ってやれよ。仕事させすぎじゃないか? 目の下にクマができてる」

「確かに・・気づいていませんでした」

ふぅ、と社長がため息をついて腕組みをする。
何か言いたそうにしていたけれど、そのまま役員室を出て社長室に戻って行った。

「・・ごめん、気がつかなくて」

「いえ、専務が悪いわけではないので」

「・・でも、いずれにせよ僕が悪いかな。あの時、僕が不用意に口にしたことも気に障ったよね・・」

あ・・・・。
見上げた専務の目の下にも、うっすらとクマができている。

気づいていないのは、私も一緒だった。

「専務も・・」

「あー・・。実はこのところ寝不足で」

「それって・・」

「うん・・・・結構ショックだった。
自分が『もう一度』なんて口火を切っておきながら、宮田さんに『専務に「ダメか?」って聞かれて、断れる女性なんているんですか?』って言わせてしまうような状況を作って・・。
ああ、自業自得だなって思ったよ。
だけど、それはそれとして、どうしたら宮田さんに理解してもらえるかな・・って、考えてた」

そんな・・。
私は涙が出そうになって、慌てて後ろを向く。

ふわっ。
スペアミントの香りと、やわらかな専務の重さが背中から肩に乗ってきた。

「ごめんね」

後ろから、囁くような専務の声がして、私の涙腺が一気に緩む。

私は、専務に包まれながら首を左右に振ることしかできなかった。



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