僕の秘書に、極上の愛を捧げます
少し長引いていた会議が定時過ぎに終わった。
慌てて役員室に戻り、彼女が待っていてくれたことにホッとする。

俺に遠藤のことを問われると察して、避けられる可能性もあると考えていたのだ。
言いたくないことだってあるだろうし。

「行こうか。裏通りからタクシーに乗ろう。先に出るから」

「はい。私もすぐに行きますね」

通りに出ると、すぐにタクシーがつかまり彼女と乗り込む。
ひとまず目的の方向だけ運転手に伝え、彼女のリクエストを聞いた。

「宮田さん、食欲はある? 何か食べたいものがあれば店を探すし、飲みたい気分なら、僕の行きつけのところもあるけど・・どうしようか」

「そう・・ですね。あまりお腹が空いていないので、お酒でもいいですか? あ・・でもそれだと、専務がお食事できないですよね」

「僕がよく行くところなら軽食もあるし、頼めばいろいろ作ってもらえるから大丈夫。そこにしようか」


彼女とふたり、アルコールメインでの時間は初めてだ。
下見がてら一緒にディナーに出かけたことはあるものの、その時は、俺がワインを少し飲んだ程度だった。

これから行く店は何でも揃っているが、彼女は何が好きで、どれくらい飲めるんだろうか・・。
俺は、彼女のプライベートをほとんど知らないんだなと改めて思う。

店の近くまではタクシーで10分ほどあり、俺は彼女に遠藤とのことを聞こうと考えた。
今なら、あまり深刻にならずに話ができるような気がして。

「宮田さん・・。遠藤さんのことなんだけど、もしかしてふたりは知り合いだった?」

敢えて言葉を選び過ぎないようにして、俺はストレートに尋ねた。



< 27 / 97 >

この作品をシェア

pagetop