僕の秘書に、極上の愛を捧げます
振り返れば、ここ数年はまともな恋愛もせずに、時間が来ればその場で終わりの関係ばかりを繰り返していた。

仕事が忙しかったのもあるし、俺の立場やカネ目的で近寄ってくる女性に本気になることは無かったから。

そんな俺を見かねてか、今の社長が『何も考えずにウチに来い。丸ごと面倒見てやる。悪いようにしないから』と、何度も声を掛けてくれていたのだ。

海外生活にも、女性との軽い付き合いにも未来が見出せずにいた俺は、前職のエグゼクティブ契約期間満了を機に社長の誘いに乗ることにした。

もちろん、仕事はきっちりやる。
期待以上の成果は当然のことだ。

日本に帰国することになったと告げると、関係のあった女性たちは『元気で』とあっさり去っていった。
それはそれで面倒に巻き込まれずに良かったとはいえ、所詮その程度の、お互いに都合のいい遊び相手だったというわけだ。

しばらく、女性とは少し距離を置いて新しい仕事に打ち込もう。
そう気持ちを切り替えていたはずなのに、まさか、自分でもどうしたのか思うくらい本気になる女性が現れるなんて。

いま、腕の中で眠る彼女は俺をどう思っているのだろう。

俺は『好きだ』と口にしたし、『恋人』だとも言った。

彼女は『朝まで一緒にいたい』『独り占めしたい』と言ってくれたけれど、『好き』という言葉は聞いていない。

「まさか・・一夜だけの思い出とか、そういうふうに考えてるわけじゃないよな・・?」

寝顔に向かって低く呟いた俺に彼女の返事は無く、とはいえ人肌の暖かさに眠気が戻ってきて、小さくため息をついてから目を閉じた。



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