僕の秘書に、極上の愛を捧げます
「理紗(りさ)・・どうしてここに・・」

「成宮、こちらの方は?」

見かねた社長が、彼に尋ねる。
彼を『成宮』と呼んだことで、女性は上司が同席しているのだと察したのだろう。

「突然押しかけてしまい、ご迷惑をお掛けします。私は、成宮が帰国前に役員をしていた企業の同僚で前川(まえかわ)と申します。どうしても確認したいことがあって成宮を探していたのですが、ようやく見つけまして」

「そう。僕は、ここの代表取締役で澤崎といいます。名前で呼び合うくらいだし、こうして尋ねてくるほどだ・・・・ふたりはどういう関係?」

「・・・・」

私が聞きたいと思うことを社長が女性に尋ねたものの、女性は答えに困ったのか黙っている。

「同僚以上の関係はありませんよ。米国企業なんて、ファーストネームで呼び合うのは珍しいことでもないでしょう。それはそうと・・確認事項が前職に関することであれば、前川とふたりで話した方が良いかもしれないので、少し・・・・外します。理紗、外で話そう」

そう言うと、彼は社長と私を役員室に残し、女性の背中を押して出ていった。
残された社長とふたり、同時にため息をついてお互いに苦笑する。

「何なんだろうな今日は。遠藤といい、あの前川という女性といい」

「そう・・ですね。でも、少なくともこの瞬間はどうにもならないですし・・。社長もお戻りになりますよね?」

「そうだな。じゃ、またスケジュール調整頼んだよ」

ヒラヒラと後ろ手に手を振り、社長も役員室を後にする。
ひとり残された私は、彼と一緒に出て行った女性を思い返していた。

『恭介・・・・ようやく見つけたわ』

ずっと、彼を探していたということだろうか。
まさかアメリカから、彼を追いかけてきたの・・?



< 45 / 97 >

この作品をシェア

pagetop