僕の秘書に、極上の愛を捧げます
ふと、以前遠藤が言っていたことを思い出す。

『噂だと、外国に婚約者もいるらしいしな』

外国にいる婚約者・・。

『どうしても確認したいことがあって成宮を探していた』

あの女性がもし婚約者だったとしたら、それは仕事のことではなく、きっとプライベートのことなのだろう。
でも・・・・彼は、『日本に帰って来る時に、そういった相手との関係は綺麗にした』と言っていた。

いったい、彼にとってどういう存在の女性なのだろう・・。
婚約者だったの?
時々、一夜を共にするようなお相手?

グルグルと空回りする気持ちを落ち着かせるため、ハーブティーでも淹れようと給湯室に向かった。


「さっきの・・前川 理紗だろ」

廊下の角を曲がったところに給湯室があり、陰になる場所に遠藤が立っていた。

「やだ・・帰ったんじゃなかったの? びっくりした・・」

「帰るつもりだったんだけど、エレベーターの前であの女とすれ違ったから翔子に教えてやろうと思ってさ」

「あの女・・って、前川さんを知ってるの?」

「前に言わなかったか? 成宮専務には外国に婚約者がいるって。それが前川 理紗・・・・前職のCEOの娘だよ」

え・・。
ということは、あの女性が現れたのは・・。

「CEOが娘と成宮を結婚させて、会社を継がせたいらしい。成宮には打診済みで、前川 理紗もすっかりその気になっていたのに、成宮専務が日本に帰ってきたから焦ったんだろう。結婚話はどうなるのか・・って」

「結婚話・・」

「翔子、もしかして成宮と付き合ってるのか? さっきの澤崎社長の口ぶりだと、そんな気もしたけど・・。そうだとしたら、早く別れた方がいい。成宮はともかく、傷つくのは翔子だぞ」

それはつまり、彼の結婚話が・・有効だということ?
だとしたら、私はどうしたらいいの?



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