僕の秘書に、極上の愛を捧げます
第一秘書が男性だったこともあり、スイーツや女性向けの手土産について、度々社長に意見を求められるようになった。

どうにか緊張せずに応対ができるようになった頃、社長に呼ばれた。

「宮田に、来週着任する専務の専属秘書を任せたい。明日、人事発令を出す。頼んだぞ」

「は・・はいっ!」

聞けば、社長が自ら海外に出向いてスカウトした人材なのだという。
20代半ばでインターネット関連のベンチャー企業を起こした社長は、常に率先して動き上場企業にまで会社を大きくした豪快な人だ。

もうすぐ50歳になる社長の周りは、同年代か少し下の世代が多い。
だから、勝手に専務の年齢は40代半ばくらいだと考えていた。


専務の初出勤の日、私は専務の役員室で控えていて、人事部から間もなく役員室に向かうと連絡が入る。

ガチャッ。
ドアが開いて、その人物が現れた。

えっ。
この人が専務・・?
想像より、ずっと若い。

「宮田さん・・?」

「あ・・はい、初めまして。専務の秘書を務めさせていただく、宮田 翔子です。どうぞよろしくお願いいたします」

私が深々と頭を下げると、専務と思わしき男性はクスッと笑った。

「そんなに畏まらないで。良いパートナーになれたらいいと思っているんだ。僕は成宮 恭介。こちらこそ、どうぞよろしく」

そう言って、専務は右手を出す。
つられて右手を差し出すと、きゅっと握られた。

表面は少しひんやりしつつも、内側が暖かい。
なんだかくすぐったくなり、思わず手を引っ込めた。

「宮田さん、初日からいきなりで申し訳ないんだけど、既に決まっている予定があるから共有するよ。これから先の分は宮田さんに調整を頼みたい」

「もちろんです。調整にあたっての特別ルールなどあれば、いま伺います。例えば、朝のこの時間帯は入れないでほしいとか、水曜の午後は空けたいなど・・」

そう聞いた私に、専務は少しだけ首を傾げてから言った。

「週に一度はランチミーティングをしよう。前後の予定を見て、ブロックしておいて」

「え・・。私と、ですか?」

「そう。よろしく」

呆気に取られている私をよそに、専務はデスクに寄り掛かる格好で電話をし始めた。



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