僕の秘書に、極上の愛を捧げます
翌日から、業務連絡のメールが1日に何度も届くようになった。

『リストを作ってほしい』
『この企業の取締役と、オンライン会議の調整をしてほしい』
『契約書のテンプレートを手直ししてほしい』

これまでは、それほど難しいリクエストではなかったのに、未開拓の企業相手だったり契約書が英語版だったりと、難易度がグッと上がったのだ。

それもあり、オフィスにいる間は仕事で手一杯で、他のことを考える余裕も無かった。

時差を考慮して残業対応していたこともあり、疲労感もあってか、帰宅してからも思い悩む時間が減ったように思う。

今の私の役割は、仕事面で彼をきちんとサポートすること。
それだけに集中して、毎日頑張った。


「宮田さん、社長が第二会議室に来てほしいそうだ」

「え? はい、すぐに向かいます」

役員室前の廊下で社長秘書に声を掛けられ、第二会議室に向かいドアをノックする。
『入って』と中から社長の声がした。

「失礼いたします。・・・・あっ」

会釈して会議室に入った私は、顔を上げて思わず声を上げた。

だって・・。
社長の前に置かれたモニタに、彼が映っていたから。


『お疲れさま』


モニタ越しの、久しぶりに見た彼の表情は曇っていた。
明らかに、疲労の色が濃い。

「・・・・専務、あの・・とてもお疲れのように見えますが・・」

私の横で、社長が小さくため息をつく。

「なぁ宮田。成宮が、宮田をニューヨークに呼びたいと言っている。行きたいと思うか?」

「えっ、それはどういった意味合いで・・」

「いくらなんでも、冷たすぎるだろ。
何も聞かされてないんだろう? さすがの宮田も成宮に愛想が尽きた頃だと思うから、俺に返してもらおうかと考えていたところだ」

『社長、待ってください。これにはいろいろと事情があって・・・・』

慌てる彼を見た社長は「もう少し優しくしてやれ」とだけ言い残し、会議室を出て行った。



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