僕の秘書に、極上の愛を捧げます
「・・・・私の・・・・ため?」

「いや、何もできなかった自分を正当化するための言い訳だな。でも、一度だけ・・どうしても我慢できなくて、外から電話を掛けたことがあったんだけど、繋がらなかった」

何か思い当たることがあったのか、彼女はハッとした表情をした。

「・・・・ごめんなさい・・」

そして、彼女の目に涙が浮かび上がってくる。
なぜ・・だ?

「・・その日、遠藤さんとご飯を食べに行って、帰ってすぐに非通知の通話があったのだけど、苦しい気持ちがピークになっていた頃で・・・・。恭介さんからの電話だなんて、思いもしなかった・・」

「いいんだよ、翔子は悪くない」

そう言って、思わず彼女に手を伸ばしたものの、届く前にやめた。
もう、気軽に触れていい相手じゃないのかもしれないから。

「・・そろそろ、部屋に戻った方がいい。明日は朝から業務してもらうつもりだしね」

本当は、このまま朝まで1秒も離れていたくない・・。

俺は思わず後ろを向いた。
彼女に、今の俺の気持ちを気づかれないように。

そっ・・。

何かが背中に触れた。
彼女の、どこか一部分だ。

「恭介さん・・・・私、今夜はここにいたらダメですか・・?」

「えっ」

背中から、彼女の声が振動を伴って聞こえてくる。

「私も、一緒にいたいです」

私・・も?
間違いなく、彼女はそう言った。

「恭介さんの背中が、離れたくないって・・言ってる・・から」

俺は振り返って、彼女の顔に・・頬に左手を伸ばす。
ピクッと、彼女の身体が反応した。

「・・まだ・・・・その権利はある?」

彼女が小さく頷いたのを確認してから、俺は両手で彼女の顔を包むようにしてゆっくりと口づける。

何度か繰り返してから唇を離すと、彼女の不安そうな表情が目に入った。



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