僕の秘書に、極上の愛を捧げます
「あら、ふたりでディナーだったの?」

「そうだ。理紗はどこかに行くのか?」

彼が理紗さんに尋ねる。
まさか、同じ場所に行くのだろうか・・。

「父に面会に行くつもりだったんだけど、恭介も一緒に行く?」

「いや、俺はこれから小夜子(さよこ)さんのところだ」

「え? どうしてアシスタントさんも一緒なの?」

そう聞かれて、彼は少し黙った。
答えに困っているようには見えなかったけれど、何か考えているようだ。

「理紗も来るか? そうすれば理由も分かる」

え・・?
小夜子さん・・とは、ふたりの共通の知人だろうか。

でもさっきの話ぶりから考えると、彼とはとても親しそうな感じだった。

「何かあるのね。いいわ、私も行こうかしら」

「あの、専務・・・・私は先にホテルに戻ります。おふたりの知り合いの方でしたら、どう考えてもお邪魔でしょうし」

私は気まずさを感じ、その場を離れようとする。
でも、彼は首を横に振った。

「ほら、恭介もそんなことは言っていないし、一緒に行きましょうよ。面白い話が聞けるかもしれないわよ」

ふふ、と理紗さんが微笑んだ。

そう言われてしまっては帰ることもできないし、行き先を知らない私はふたりの後ろを歩くしかない。

今更ながら、前にいるふたりはとてもお似合いだ。
それなのに彼はなぜ、『俺が理紗と結婚することは絶対に無い。可能性はゼロだ』と言うのか・・。

「理紗、先に小夜子さんの部屋に行ってくれるか? 俺たちは飲み物を買って行くから、話し相手になってやって」

「そうね。じゃあ先に行ってるわ」

理紗さんは通りに面した高層マンションに入って行き、彼と私は少し先にあるリカーショップに向かう。

「あの・・恭介さん。私、ご一緒できる立場ではないと思うので先に戻りますね」

理紗さんひとりにだって、こんなにモヤモヤとした気持ちになるのに、更にふたりの知り合いの女性が現れては心がもたない。

これ以上・・惨めな思いをしたくなかった。



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