僕の秘書に、極上の愛を捧げます
そう、だったんだ。
そんなふうに、考えてたんだ。

お互い、卑屈になってたの?

「翔子・・もう日本に帰るか? 社長に話して、元のポジションに戻してもらうこともできるから・・」

彼を見上げると、とても寂しそうな表情を浮かべている。
抱き締める腕を離さないのは、帰したくないからだと思っていい?

彼は、私に必ず意思確認をする。
それに対して、いつも私に決めさせるのは責任逃れをするためなんじゃないかと考えることもあった。
決めたのは翔子であって、俺じゃない・・と。

けれど逆の考え方をすれば、彼が全て決めていたら『あの時あなたがそう言ったから従うしかなかった』と、やり切れない気持ちで、恨むような思いで、私は覆いつくされていたかもしれなかった。

今回は・・・・。

「恭介さん、私が日本に帰ることを望んでるんですか? 遠藤と元の鞘に収まることを認めるんですか?」

「えっ・・」

「答えてください」

真っ直ぐに彼を見つめると、瞳が揺れていた。
迷っているんだ・・。

彼の腕が私を開放する。
それに、どんな意味があるのだろう。

「・・翔子がそうしたいと言うなら・・・・俺は・・」

「私を、手放してもいいんですよね?」

挑むような強い視線で私は尋ねた。
そのことが、彼の秘めた何かを刺激したのかもしれない。

「・・・・っ、ふぅっ・・」

気づけば一瞬で距離を詰めた彼が、私の後頭部に手を添え、かぶりつくようなキスで舌を暴れさせる。

舌だけじゃなく、吐息もとても熱い。

まるで口内を犯されるような激しさに、私の気持ちも、そして身体も反応し始める。

彼に、抱かれたい。

「こっちだ」

手を引かれて通りに出ると、すぐにタクシーが停まった。
5分ほどでホテルに到着し、そのままエレベーターで最上階に向かう。

そして部屋のドアが閉まった瞬間、彼が私の耳元で囁いた。

「翔子、今夜は優しくできないよ・・覚悟して」



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