僕の秘書に、極上の愛を捧げます
朝食を食べ終わるのを見計らって、彼女が俺に問いかけた。

「理紗さんには・・恭介さんと私がお付き合いしていることを、いつか話すんですか?」

「そうだな・・・・。でも小夜子さんも言ってたように、もう気づいてるんだろうし、あえて話さなくてもいいのかと思ってるけど。どうして?」

「・・理紗さんの前では、知られたくないようなそぶりをするから・・・・ずっと気になっていて・・」

そうか。
俺は理紗を気遣っていたつもりだったけれど、逆に彼女を不安にさせていたのか。

「前に俺が、『理紗と結婚することは絶対に無い』って言ったの覚えてる? 
理紗には、好きな男がいるんだ。だけど、ずっと片思いでね。俺が誰かと一緒にいるのを見ると、嫉妬するんだよ。
『恭介だけ恋愛を楽しんでいてずるい』とか『私がお相手を見定めてあげる』とか言うようになってさ。かわいそうでもあり、面倒でもあり・・。

それもあって理紗の前では、仲良くしているのを見せないようにしていたんだけどね。・・・・ごめん、それが逆に翔子を不安にさせていたことに、気づいていなかった」

彼女は、横に振った。

「私の方こそ・・・・勝手に誤解してた。
理紗さんは噂通り婚約者で、私は・・遊びとは言わないまでも、将来を考えるような相手じゃないんだと思ってた。だから理紗さんの前では、『上司と部下』でいるところを見せるのだと・・」

はぁ、と息を吐いて彼女は苦笑いする。
肩の力も抜けたのか、ソファに身体を沈ませた。

「翔子、俺もひとつ聞いていいかな」

「もちろん。何でも」

「小夜子さんが、『心から大切にしてくれる人と幸せになってほしい』って言ったとき、返事するまでに少し間があったよね・・・・。
それって・・さっき翔子が言ってたことから考えると、俺が最終的に理紗を選ぶのなら、大切にしてくれる相手は俺じゃないと思ったから・・かな?」

呟いた彼女を抱き寄せ、俺は『ごめんね』と囁いた。



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