僕の秘書に、極上の愛を捧げます
公園内にあるキッチンカーで、クロワッサンやチキン、コーヒーを買って、ふたりでベンチに腰掛ける。

「寒くないか?」

「さっき恭介さんにもらったブランケットを持ってきたから大丈夫。これ、とても暖かいし色合いもすごく素敵。忙しくて買う時間も無さそうなのに、ありがとう」

すごく嬉しそうにしている彼女に、なんだか罪悪感が湧いてきた。

渡せなかったネックレスを確認するように言ったものの、明示しなかったから、彼女への贈り物だと分からなかったかもしれない。

だとすると、このブランケットが初めてのプレゼントだということか・・。

「翔子、何か欲しいものは無い?」

「・・どうしたの? 急に」

「寒くなってきたし、何か必要なものがあれば揃えるといい。買い物に付き合うよ」

「ありがとう。必要なもの・・何かあるかな・・」

おそらく、リクエストは出てこないだろう。
分かっていて、あえて聞いているのだ。

俺としては、そうしてやりたい存在なのだと、まず感じてもらうことが目的だった。

「あ、そうだ。恭介さん、これ・・」

何がきっかけになったのか、思い出したようにバッグから小さな包みを取り出した。
手渡されて開けてみると、例のネックレスだ。

「ああ、持ってきてくれたんだね。・・でも、これはもういいんだ」

俺は受け取ったネックレスをポケットに入れる。
不思議そうな表情の彼女を、抱き寄せて腕の中に入れた。

「これを買った時の俺と、いまの俺とじゃ、翔子への気持ちの大きさが違うから。別のものを贈りたくなったから、これは取り下げ。
それと、これを選んだ時の自分の気持ちに後悔があるから、戒めも込めて俺がもらってもいい?」

「・・後悔?」

「そう。気持ちは、モノじゃなく言葉や態度で伝えなきゃいけない・・ってね」

抱き寄せた腕に力を込め、更に距離を詰める。

塞いだ唇の隙間から『愛してる』と呟いた声は、彼女に届いただろうか。



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