僕の秘書に、極上の愛を捧げます
ランチを終えてオフィスに戻ると、専務の役員室の前に社長が立っていた。
慌てて腕時計で時間を確認し、約束の時間よりも前でホッとする。

「社長、早く来すぎですよ。僕の秘書を慌てさせないでください」

「あぁ、悪い。もう戻ってるかと思って来てみただけだ。そう・・だ。宮田、ちょっといいか? 少し宮田を借りるぞ、成宮」

「どうぞ。余計なこと言わないでくださいよ」

「アハハ、それはどうかな。じゃあ宮田、社長室に」

私は社長の後について社長室に向かった。
なぜ呼ばれたのか気になりつつも、中に入るとなんだか懐かしい気持ちになる。

「そんな嬉しそうな顔して、ここに戻ってきたいのか?」

「あ・・顔に出てましたか? ここで育てていただいたので、つい懐かしくて」

「そうか。でも成宮が反対するだろうから、当分は戻れないぞ」

それは、少なくとも専務に及第点をもらえているということだろうか・・。
私はホッとして小さく息を吐いた。

「どうだ、上手くやれそうか?」

「はい。だいぶ専務にご配慮いただいているようで申し訳ないところもありますが、お役に立てる部分を増やしていければと」

「いや、今でもかなり役に立っているはずだ」

「はい?」

ふふ、と社長は意味ありげに笑った。
私を専務の専属秘書にしたのは、私の知らない思惑があるのだろう。

「上手くやれそうならそれでいい。成宮は海外が長いし、多少は文化の違いとか距離感のズレなんかはあるかもしれないが、まぁいろんな意味でデキるヤツだから大丈夫だろう」

それに・・と、社長は腕組みをしながら言う。

「忘れさせてくれるんじゃないか? 昔の男のこと」

「・・それは・・・・専務に関係無いですから」

私は社長から視線を外し、窓の外の景色に目を向けた。



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