僕の秘書に、極上の愛を捧げます
彼女に、俺がやると決めたことを伝えなければならない。
背負うものが大きくなるのは、きっと俺だけじゃないから。

伝えた上で、それでもこの先を一緒に歩いてくれるのか確かめる必要があった。

でも・・。
もし断られたら・・。

俺は、彼女を諦めることができるだろうか・・。

「恭介さん」

「・・ん?」

「恭介さんは私がいなくても、ひとりで何でもできる人だから・・・・私の存在って小さいんだろうなぁって思ってた。
だから『帰ってくる場所』って言われて、なんだか驚いて・・」

「・・もう、ひとりじゃ無理だよ」

そう呟いた俺に、え?と彼女が顔を上げて俺を見る。

「翔子にとって誰よりも相応しい男でいたいけど、これから先、スマートじゃないカッコ悪いところもたくさん見せることになるんだ。
だけど、翔子がそばにいる温かさを知ってしまったから、ずっと一緒に歩いてほしいと願わずにいられなくて」

抱えていた想いを、言葉に乗せて彼女に伝える。
断られるのが怖い・・という部分だけは言えなかった。

それを先に言ってしまったら、もし彼女が断りたくても、断りづらくなってしまうと思ったからだ。

そして、俺はついに口にした。

「翔子、俺、理紗の父親の会社を継ぐことに決めた」

「えっ、それって・・理紗さんと・・」

彼女の表情が一瞬で曇る。

「違う、そうじゃない」

「でも・・」

「そうじゃないんだ。『娘婿』としてじゃなく、『息子』として後を継ぐんだよ。小夜子さんが、理紗の父親・・潤さんと再婚して、俺は義理の息子になった。
潤さんは事業譲渡して会社を手放すつもりだったけど、理紗の父親や理紗がずっと守ってきたものを、これからは、息子の俺が守っていきたいと思ったんだ」

事情を理解したのか、彼女は黙って頷いていた。



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