僕の秘書に、極上の愛を捧げます

Side 翔子

彼が佐伯さんと約束していた時間を少し過ぎてから、まだ赤みの残る目元でフロントに現れた私たちを見て佐伯さんが狼狽えた。

「おせーよ、成宮。・・えっ、ええっ・・? ふたりともどうした、何かあったのか?」

「佐伯、遅くなってごめん。ここに来る直前に、彼女にプロポーズしたんだ」

「はぁ??? なんでまたこのタイミングで・・・・まったく・・」

呆れる佐伯さんをよそに、彼はクルマのキーをポケットから出した。

「行こうか。クルマ取ってくるよ。翔子は佐伯とエントランスの端の方で待ってて」

ホテルの地下駐車場に向かう彼とは逆の方向に、佐伯さんと私は並んで歩き出す。
そういえば、佐伯さんがニューヨークに来ていることは彼に聞いたものの、その目的は聞いていなかった。

「その様子だと、OKしたんだね。成宮のプロポーズ」

「はい。何と言うか、前もって計画されたものではなかったようで・・。でも、感動しました」

「へぇ、あのカッコつけの成宮が演出ナシとはね。前にも言ったと思うけど、本当に宮田さんが好きなんだろうな」

「そうだと・・嬉しいです」

はぁー、と佐伯さんがため息とともに空を仰ぐ。
何か、少し緊張しているようにも見えた。

「宮田さん・・・・成宮は、何て言ってた? プロポーズの言葉」

「えっ?」

「ん ───、何て言うかなぁ・・俺は・・」

それって・・。
もしかして、佐伯さん・・。

「あの、佐伯さん・・」

そう言いかけたところで、彼のクルマがエントランス脇から現れる。
佐伯さんは、ニヤッと笑うとすぐに後部座席に乗り込んでしまった。

「翔子は潤さんと会うのが初めてだから・・。そうだな、うちの社長よりも豪快なイメージだけど、仕事はとても緻密に進める人だよ」

「そうなのね。受け入れてもらえるかしら・・」

「宮田さんは問題無いって。成宮を本気にさせただけで合格点だと思うぞ。俺、大丈夫かな・・」

少し遠くを見ながら、佐伯さんはずっと何かを考えているようだった。



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