僕の秘書に、極上の愛を捧げます
彼と私は、先にマンションを出た。
4人で話さなければならないことも、あるだろうからと。

「ま、それは表向きの理由で、早く翔子とふたりで過ごしたかっただけなんだけどさ」

ふふっ、と笑いながら、彼は私の右手に自分の左手を絡めた。

「理紗さんの片思いの相手は、佐伯さんだったのね。そして佐伯さんも、理紗さんを・・」

「そう。理紗と俺は幼馴染なんだけど、佐伯とは高校生からの付き合いなんだ。親父さんの仕事の都合で、ニューヨークに赴任してきたって言ってたかな。
翔子も知ってるだろうけど、佐伯は高校生の時から面倒見のいいヤツでね。俺が親父のことで落ち込んでる時に、随分助けられた。それを間近で見ていた理紗が、佐伯に惚れたってわけだ」

「そうなんだ。でも、理紗さんて、一度も恭介さんを好きになったことは無いのかな・・」

「あー、絶対に無いね」

やけにきっぱりと言い切る彼に、私は『なぜ?』という表情を向ける。

「ワイルドさが全く感じられないんだってさ」

「は? ワイルドさ・・・・」

そういえば・・と、私は潤さんと佐伯さんの顔を思い浮かべていた。
確かにスタイリッシュなスーツというよりも、日焼けした肌に白いシャツが似合うふたりだ。

「そういう・・ことかー・・」

妙に納得した私の顔を、彼が覗き込む。

「翔子も・・ワイルド派か?」

「えー? 私は・・しいて言うなら、スタイリッシュ派かなぁ。それより、理紗さんの好みが違って良かった」

「安心した? そうだ・・・・スタイリッシュで思い出したよ・・。あの・・さ、翔子に聞きたいことがあるんだ・・・・遠藤さんとは・・その後・・どうなったかな・・」

横断歩道の信号待ちで、彼は聞きづらそうに口にした。



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