【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「アシュフィールド侯爵は、なんてことをしてくれたんだ……!」

 さらには、ギルバート様はそんなことをぼやかれていた。「なんてこと」。それは、きっと私を送り込んできたことだろう。そう判断し、私は「すみません……」と言っていた。勝手に父が起こした行動とはいえ、私に責任がない……わけではない、と思う。

「シェリル嬢。俺の年齢は知っているな?」
「はい、三十三だとお聞きしております」
「そうだ」

 ギルバート様は私の目をまっすぐに見つめて、そうおっしゃる。その表情は、至って真剣で。私は、何を告げられるのかと怯んでしまった。しかし、ギルバート様は私の怯みを見てか「ゴホン」と咳ばらいをされ、「シェリル嬢は、帰る場所はあるのか?」と問いかけてこられる。……帰る、場所。そんなもの、あるわけがない。

「いえ、ありません。家は、追い出されていますので」
「……だろうな」

 私の回答を聞かれて、ギルバート様は露骨にため息をつかれると、クレアさんとマリンさんに何か指示をされている。……一体、何をされているのだろうか? 妻としては見られないから、と私を追いだす計画でも立てていらっしゃるのだろうか? ……メイドで良いので、置いてほしいのだけれど。誰も、妻になりたいとは思っていない。

「あ、あの、メイドとして……」
「――シェリル嬢」

 私が、「メイドとして置いてほしい」と言おうとした時だった。ギルバート様はおもむろに私の肩に手を置かれると、「……ほとぼりが冷めるまで、ここにいてもいい」と、私が想像もしていなかったことをおっしゃった。……ここにいても、いいの? そのお言葉が信じられず、私が目をぱちぱちと瞬かせていると、ギルバート様はまたため息をつかれた。……やはり、どこか苦労人の香りがする。
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