【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第36話 美貌の令嬢
 リスター家を出て、王都に向かって馬車を走らせること約一時間半。たどり着いたのは、リスター家には劣るものの、豪華なお屋敷だった。どこか煌びやかな印象を与えるそのお屋敷の全体的な色合いは青色。その青色は涼しげな印象を与えてくる。リスター家は紫色だったので、いろいろと違うなぁと思ってしまう。

「シェリル嬢。……その、本当に大丈夫、か?」
「はい、大丈夫です。ギルバート様は心配性ですね」

 馬車に乗り込んでから何度問いかけられたか分からない問いかけに、私は苦笑を浮かべながら返事をする。ギルバート様は心配性で、とても過保護だ。私が傷つくのを出来る限り避けようとしてくださる。……でも、私は分かっている。傷つくのを避けてばかりでは、この世の中は生きていけないって。それは、実家での虐げられてきた生活があるからこそ分かること……なのかもしれない。

「そうか。……じゃあ、行こうか」
「はい」

 ギルバート様にエスコートされ、パーティーホールに入ればその熱気に何処か意識が飛びそうになった。……社交界に顔を出すのは久々だし、そもそも婚約解消の騒動以来行きたいとも思わなかった。指をさされて笑われるのが少し怖かったから。……それでも、ギルバート様のお隣に並びたかった。だから、私は今日参加を決めた。

 ギルバート様のお隣を堂々と歩いていれば、周囲の視線は徐々に私たちにくぎ付けになる。……正体が、バレてしまっただろうか? そう思うと少しだけ怯んでしまいそうになるけれど、私はそれをグッとこらえて背筋を伸ばして前だけを向いた。こういう時は、堂々とした方がいい。サイラスさんは、そう教えてくれた。
< 115 / 157 >

この作品をシェア

pagetop