【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「そ、それに、ね。実はもう……作っていて。ハンカチーフに、刺繍を、してみたのよ。……受けっとってくださると、思う?」

 寝台の上でもじもじとしながらそういう私は、間違いなく恋する乙女だろうな。そんなことを考えながらクレアとマリンを見つめれば、二人はどこか生温かい視線で私のことを見つめていた。……そういう目を、向けないでほしい。その、いろいろと、考えてしまう、から。

「旦那様のことですし、シェリル様からのプレゼントを無下にすることはありませんよ」
「そうですよ。もしかしたら、お守りがてら持ち歩かれるかもしれませんし……!」

 マリン、クレアの順番でそう言って、二人は私に対して微笑みかけてくれる。そのおかげで、私はギルバート様にハンカチーフをプレゼントする覚悟が出来た。はっきりといえば、みんなのいる前で手渡すのは恥ずかしいので、二人きりになったところで……って思ったけれど、そっちの方がもっと恥ずかしいか。ギルバート様と二人きりなんて、何をお話したらいいかがまたわからなくなってしまうわ。特に、この間のことがあるから。

「そ、その……。クレアとマリンから、渡してもらえるっていうことは……?」
「それは無理ですよ。シェリル様からもらってからこそ、価値があるのですから! そうと決まりましたら、今日も綺麗におめかししましょうね~!」

 はりきったようにそういうクレアと、少し呆れたような表情のマリン。……この二人も、私の楽しい日々には欠かせない存在。……もちろん、ほかの使用人たちも。

(私、絶対に実家に戻りたくないの。エリカに、何をされても負けるつもりはないわ)

 そして、そんなことを決意する。その間にも、クレアとマリンは私の今日のワンピースを選んでくれていた。だからその間に私は寝台のすぐ隣にある引き出しから、ギルバート様にプレゼントするために刺繍を施したハンカチーフを、取り出した。どうか、受け取ってくださいますように。そう、祈っていた。
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