【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
(そうだわ。今のうちに、渡してしまいましょう)

 食事がある程度並べ終えられたころ。私はギルバート様をまっすぐに見つめて「……少し、よろしいでしょうか?」と恐る恐る手を挙げて言う。そうすれば、ギルバート様は「どうした?」と優しく問いかけてくださった。……そうよ。ギルバート様はこんなにもお優しいお方なのよ。無下にしたりすることはないと、信じなくちゃ。

「わ、私……ギルバート様に、プレゼントを作ったのです。……受け取って、くださいますか?」
「プレゼント、か?」

 私の言葉に、ギルバート様がただ目をぱちぱちと瞬かせる。それを見て私は顔を真っ赤にしながら、マリンにラッピングしてもらったハンカチーフを持って、ギルバート様のもとに近づく。……なんだか「好き」といった時よりも、緊張しているかもしれない。あぁ、私のバカ。

「こ、これ、マリンにラッピングしてもらって……。あまり、綺麗にできたとは言えませんが……」

 ゆっくりと差し出したハンカチーフを、ギルバート様は受け取ってくださった。その後「……解いてもいいか?」とおっしゃるので、私は静かに頷いた。綺麗な真っ赤なリボンを、ギルバート様の指が解く。それはどこか不釣り合いに見えるものの、不思議と似合っているように私には見えた。ごくりと息をのみながらギルバート様の様子を見つめていれば、ギルバート様が私の刺繍したハンカチーフを見て、目を丸くされていた。

「……シェリル嬢?」
「そ、それ、私が、刺繍したの、です。ずっと、渡そうか迷っていて。けど、クレアとマリンに明日から出掛けられると聞いたので、その、渡す勇気が出たのです。もらっていただけると、嬉しい、です」

 しどろもどろな言葉しか、言えなかった。それでも、ギルバート様は表情を嬉しそうに崩されると「ありがたくもらう」とおっしゃってくださった。その後、そのハンカチーフを綺麗にたたむと、ポケットに入れてくださった。……使ってくださる、ということでいいのよね?
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