【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「今までのシェリルは、面白味のない女だった。それに、魔力もそれほど多くなかった。とてもではないが『豊穣の巫女』だとは思えなかった」
「……それは、どういう意味ですか」
「俺は『豊穣の巫女』が欲しかった。エリカからそういうオーラが出ていたから、エリカに乗り換えたが……まさか、魔力を奪っていただけだったとはな。俺も弄ばれたものだ」

 やれやれといった風な効果音が付きそうな表情で、イライジャ様は私の顔にご自身のお顔を近づけてこられる。……来ないで。そういう意味を込めて、イライジャ様に掴まれていない方の絵tで彼のことを押すけれど、びくともしない。

「『豊穣の巫女』ではないエリカに、用はない。だからシェリル、俺とやり直そう」

 そうおっしゃったイライジャ様が、私の腰に手を伸ばされる。それが恐ろしくて、私はただその手をよけた。そうすれば、イライジャ様は露骨に舌打ちをされる。やっぱり、今までの態度とは全然違う。

「イライジャ様こそ、今までの態度はすべて演技だったのですか? 私たち姉妹のことを、騙していらっしゃったのですね」
「騙すなんてひどいな。優男を演じていれば、疑われにくいからな。だから、演じていたにすぎない」
「エリカは、どうされますの?」
「あんな奴はもう必要ない。アシュフィールド侯爵家に返すさ」

 ……このお方は、人を何だと思っているのだろうか。そう思ったら、私の身体の奥の魔力がふつふつと湧き上がってくる。それは、怒りからだとわかっている。だけど、本当にここで魔力を暴走させるわけにはいかない。わかっている、分かっているけれど――抑えることが、出来なくなりそうだった。

(ダメよ。ここで魔力を暴走させてしまったら、周りに被害が及んでしまう――!)

 必死に綺麗にした庭も、必死に育ててきた花たちも。すべてが滅茶苦茶になってしまう。そう思って、私が必死に心を抑えつけていれば、イライジャ様は「……強情だ。さっさと暴走させてしまえばいいのに」なんてボソッとおっしゃる。このお方は、私のことで遊んでいらっしゃる。私が魔力を暴走させることを、心待ちにされている。……それから、なんだか、私の体の中の魔力の量が、今までの比ではないほど多くなっていた気がした。
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