【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「どうせ、重罪になるのならばシェリルを殺してから捕まることにする。……俺はね、シェリルの容姿が元々すごく好みだった。……婚約を解消したのがもったいなさ過ぎて、愛人にでもしようかと思っていたぐらい」
「う、ぁ……」
「それに、俺がくるってしまったのはシェリルとエリカが原因だ。……だったら、その責任を取らせる意味でどちらかでも殺してから捕まることにするさ」

 どんどん強まる首元の力に、私の脳がぼんやりとして、視界が真っ白になっていく。ギルバート様とサイラスさんは二人がかりで私のことを助けてくださろうとするけれど、イライジャ様の馬鹿力には敵わないようで。……いや、いや、死にたくないっ! こんなところで、こんな男に――殺されたくないのっ!

 そう思ったら、もう何でもよくって。私は思い切り膝で――イライジャ様の、腹をけり上げた。これもきっと、火事場の馬鹿力とかいうやつだったのだろう。それか、魔力が暴走しかけて力が増幅したか。そのおかげで――イライジャ様は、軽く宙を舞う。その後、地面にたたきつけられ、意識を失ったようだった。

「は、はぁ、はぁ、はぁ……!」

 ようやく解放されて、私はまた息が吸える喜びに歓喜する。……その所為で、サイラスさんとギルバート様が軽く引いていることには、気が付けなかったけれど。だけど、すぐにサイラスさんは現実に戻ってきてくれたのか、イライジャ様を素早くとらえてくれて。……私、助かった、のよね?

「イライジャ様に殺されるなんて……絶対に、嫌」

 その後、小さくそんな声が出てしまう。なんというか、吹っ切れたら人間って強いのね。それを、軽く実感したような出来事だった。

「――シェリル嬢、大丈夫か!?」
「ギルバート様……」

 それからしばらくして、軽く引いていらっしゃったギルバート様は、ようやく現実に戻ってこられて私のことを力いっぱい抱きしめてくださった。……あぁ、このお方に抱きしめられるのは、好き。嫌悪感なんて、ちっともない。やっぱり――私は、ギルバート様が、好き。ギルバート様が、私の王子様なんだって、実感できた。
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