【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「……しかし、旦那様。馬車ごと転移魔法をかけたので、さすがに魔力の消費量が半端ないですよ」
「悪いな、サイラス」
「まぁ、いいのですけれどね。これでも魔力の量は多い方ですし」

 ジト目でギルバート様を見つめながら、サイラスさんは疲れたように肩を回す。……馬車ごと転移魔法って、なんだか大それたことよ。そう思って私が目をぱちぱちと瞬かせていれば、サイラスさんは「多分、シェリル様も使えるようになりますよ」とにっこりと笑って言ってくれた。……よし、どうせだし習得したい、かもしれない。だって、いざとなったら利用できるもの。

「そういえば、旦那様。シェリル様の護衛の魔法使いは、いつ来られるのですか?」
「……それがだな、あっちはあっちでいろいろと揉めているらしくてな。もうしばらくかかるそうだ」
「……そのお方がいれば、こんなことにはならなかったかもしれませんね」

 サイラスさんはそういうし、正直私もサイラスさんと同意見かもしれない。今回はギルバート様が駆けつけてくださったおかげで助かったけれど、その……やっぱり、出来れば魔力が暴走しそうになった時に止めてくださる魔法使いの方は側にいてほしいかなぁ……って。

「まぁ、半年以内には来ると思う。……多分」
「それは信頼のできない情報ですね」
「まぁな。だが、優秀な魔法使いは引っ張りだこだしな。仕方がないといえば、仕方がない」

 そうおっしゃったギルバート様は、私に少しだけ視線を向けてくださった。そして「シェリル嬢が無事で、本当に良かった」なんておっしゃってくださった。……あぁ、やっぱりこのお方はとてもかっこいい。私は、やっぱりこのお方にべた惚れ……なの、かな、なんて。

(っていうか、そもそもイライジャ様が捕まったらエリカはどうなるの……?)

 そんなとき、ふとそんなことを思ってしまう。エリカはイライジャ様の言いなりに近かったみたいだし、彼がいなくなったら心のバランスを崩してしまうかもしれない。エリカは、精神面でかなり脆い面があるから。……特に、恋溺れやすい性格だったのかもしれない。
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