【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「そうだ、シェリル嬢に一つだけ、報告しておかなければならないことがあった」
「……なに、でしょうか?」
「アシュフィールド侯爵家だが、没落することが決まったぞ」
「……え?」

 エリカのことを考えていた時に、突然落とされた爆弾。……私の実家が、没落? 一体、何故? そう思って私が呆然としていれば、ギルバート様は「まぁ、簡単に言えば不正と隠ぺいだな」とおっしゃって、私に何かの資料を見せてくださった。……でも、よくわからない。

「……その、あまり意味が……」
「だろうな。ただ、簡単に言えば脱税。それから、『豊穣の巫女』を報告しなかったという罪だ。シェリル嬢の両親は、しばしの間投獄され平民落ち。エリカ嬢に関しては、投獄はなしで即平民落ちだそうだ」
「……エリカ」

 別に、両親のことは構わない。ただ、どうしてもエリカのことだけは気になってしまう。両親から蝶よ花よと育てられてきたあの子が、平民になって生きていけるとは到底思えない。……哀れ、ね。私に同情されるのは、嫌だろうけれど。

「まぁ、因果応報だろう。……ただ、な」
「……どうか、なさいましたか?」
「不正の情報に関しては、俺が調べたものじゃない。……イライジャの奴が、こっそりと隠し持っていた。……多分だが、脅迫の材料に使おうとしたのだろう」
「それを、どうやって手に入れましたの?」
「マッケラン公爵家について調べていたら、見つかったからコピーしておいた」

 ……それは、その。なんといえばいいかが、分からない。

(っていうか、それは盗みに近いのでは……?)

 それか、内部にこちらの協力者がいたか。その二択のどちらかだと思うけれど、私に真実を知る術はない。……まぁ、とにかく。今わかるのは、イライジャ様が重罪で裁かれること。アシュフィールド侯爵家が没落することで……いいの、よね?

(なんだか、突然のことで脳が追いついてくれないけれど……)

 一つだけ、言えることがある。

 ――悪いことは、出来ないわね。

 それだけだ。
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