【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「シェリル。こんなところにいたのか」
「……はい、本日もお庭のお世話をしておりました」

 その日も、私はいつも通りお庭の整理をしていた。今日は日差しが強いので、日傘はきちんと差している。……というか、マリンが日傘を持って離れてくれないというのが大きい。クレアはまだ大事を取って静養中なので、私の専属侍女はマリン一人。だからだろうか、責任感がすごく強くなっているというか……。

 ついでに言うと、ギルバート様はついに私のことを「シェリル」と呼び捨てにしてくださるようになった。ギルバート様曰く、前々から呼び捨てにしたかったそうなのだけれど、緊張して呼べなかったとかなんとか。……やっぱり、十五も年上だと思えないほど不器用な人。ちなみに、私は相変わらず「ギルバート様」呼び。

「マリンも、ご苦労だな」
「いえ、それが私の仕事ですので」

 私は庭のことになるとそこら中動き回るので、正直マリンが疲れていないか心配になってしまう。それでも、マリンはにっこりと笑ってそう言ってくれているから、大丈夫なのだろう。……マリンは、嫌なことは嫌だと態度に出すタイプみたいだし。

「ギルバート様? 突然どうされたのですか? 私に、何か用件があるのですか?」

 マリンを労うギルバート様に、私はそう声をかけた。……決して、妬いているわけではないわよ? だって、ギルバート様がこの時間帯に私の元を訪れるのはとても珍しいことだもの。普段は、昼間はお仕事のために執務室にこもりっぱなしにされているからね。何か、あったのかしら?

「いや、用件というほどの用件ではない。……ただ、少し仕事が片付いたし、せっかくだからシェリルの世話をしている庭でも散歩するか、と思って……な」
「そういうことでしたのね」

 ギルバート様は、時々気分転換にお庭を散歩されているらしい。多分、今回もそういうことなのね。……昼間というのは、珍しいのだけれど。
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