【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
(けど、まさか私が乙女心を抱くときが来るなんて……ね)

 実家では虐げられ、イライジャ様とは微妙な関係を続けていた私が、まさか恋をして乙女心を取り戻す日が来るなんて。そんな日、一生来ないって思っていたのに。そう思ったら、私はクスっと声を上げて笑ってしまった。その瞬間、少し強めの風が吹き、木々や花々を揺らす。そして、少しだけ降ってきた緑色の葉っぱに、視線を奪われてしまった。……綺麗。そう思っていれば、ギルバート様は私とつないでいた手を解き、今度は私の肩を抱き寄せてくださった。……あぁ、本当にこういうの好き……かもしれない。

「シェリル。……一つだけ、訊いてもいいか?」
「はい、何でしょうか」

 改まった声音でそう告げられ、私は葉っぱに視線を向けたままそう返す。そうすれば、ギルバート様は「……今、幸せか?」と私に問いかけてこられた。……何、それ。私の今の表情が幸せそうじゃないっていうの? もしもそう見えるのだとすれば……ギルバート様は鈍感を通り越して、目が節穴ということになるのだけれど?

「……私、ギルバート様から見てどう見えますか?」

 我ながら面倒な女の質問だなって思う。それでもと思い、勇気を振り絞ってそう問いかければ、ギルバート様は「……自惚れさせてくれ、すごく、幸せそうに見える」とおっしゃった。……そう、だったらいいのだけれど。

「その通りです。……私、ここに来れてよかった。そう、心の底から思っています」
「そうか。ならば、よかった。……俺も、シェリルに出逢えてようやく幸せになれたのかもな」

 ……それならば、いいのだけれど。そう思いながら私が相変わらず降ってくる葉っぱに視線を向けていると、ギルバート様は「アシュフィールド侯爵家の元使用人たちは、大体全員うちで雇うことになった。……幸せそうな姿を、存分に見せてやれ」なんて、私が予想もしていなかった爆弾を落とされる。……そのお言葉を聞いて、私はぶっ倒れてしまいそうだった。いや、どうして?
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