【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「旦那様は、もうすでに待機されているとおっしゃっておりました。少し、お仕事が早めに終わったとか……」
「そ、そう。待たせるのも悪いわね。じゃあ、早足で向かいましょう」

 正直、誰かと食事をすること自体が久々すぎて、どういう表情をして食事を摂ればいいかが分からないのだけれど、そこは何とかなると信じたい。普段、一人で食事を摂っていたので、食事をする際の表情が本当に分からない。一人だった時は、無表情でよかったのに……。

「失礼いたします、旦那様。シェリル様が来られました」
「……入れ」

 クレアが一つのお部屋の扉をノックし、開けてくれる。そして、私にお部屋に入るようにと笑みを浮かべて言ってくれた。なので、私は「し、失礼いたします……」とぎこちない一礼をした後、そのお部屋に足を踏み入れた。

 そのお部屋は、やはりと言うべきか食堂だった。大きな長方形のテーブルが中央に置いてあり、その周りに十以上の椅子が並べられている。天井からはシャンデリアが吊るされており、とても煌びやかな空間だった。

 しかし、それよりも。私は、どこに腰を下ろすべきなのだろうか。そう思って迷っていれば、ギルバート様の後ろに控えていたサイラスさんが「ゴホン」と一度咳ばらいをし、一つの椅子を引いてくれた。……あそこに、座ればいいのだろう。

「し、失礼します……」

 サイラスさんにそう声をかけて、その椅子に腰を下ろせばサイラスさんは何故か私を見て驚愕したような表情を浮かべる。……何か、無礼なことでもしただろうか。そう思っていたものの、サイラスさんは小さく「侍従には、そう言うことは言わないように」と私に耳打ちしてきた。……そう、なのね。

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