【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「ですから、シェリル様は旦那様にお似合いだと思うのです。努力家同士、互いを高め合う関係を築けるかと……」
「おい、サイラス。お前、最近言っていることが変わっていないか?」

 執事のサイラスの言葉に、俺の顔は若干ひきつった。アシュフィールド侯爵家から送られてきた少女――シェリル嬢は、極上の容姿をしていた。桃色の艶やかな髪。美しい水色の瞳。男性ならば誰もが虜になりそうな美貌。アシュフィールド侯爵によれば、婚約者に婚約を解消されたので、是非とももらってやってほしいということだった。正直、俺の元にこういう風に行き場を失った少女が送られてくることは多いし、今回も適当なところに嫁入りさせてことを済ませようとしていた、のだが――使用人たちが、シェリル嬢のことを気に入り始めたのだ。

「いえいえ、私は彼女のことを勘違いしておりました。やはり、王都貴族の娘はダメだ。そう言う、思い込みがありまして……」
「……そうか」

 サイラスは、王都貴族が大嫌いだ。そのため、俺の元に送られてくる少女全員に冷たい態度を取っていた。しかし、サイラスは気が付けば、シェリル嬢を大層気に入っていた。「努力家だ」「性格も大層よろしい」「何よりも、旦那様を支えてくださるでしょう」。そんな言葉を並べ、サイラスは俺とシェリル嬢を婚姻させようとし始めた。……でも、考えてみてほしい。俺は三十三。それに対してシェリル嬢は――十八。年の差が、ありすぎるだろう!?

「……こんなことを言ったら申し訳ないが、俺とシェリル嬢では年が十五も離れている。シェリル嬢からすれば、俺は立派な『おっさん』予備軍だ」
「いえいえ、シェリル様に好みのタイプを問いかけた際『優しい人』とおっしゃっておりましたよ? 年齢については、気にしないとおっしゃっておりました!」
「それは多分、オブラートに包んでくれたのだと思うぞ……」

 俺がいる手前、年齢のことは言えないだろう。そう思ったから、シェリル嬢は好みのタイプに無難に「優しい人」と答えたのだろう。それは、容易に想像がつく。それに、噂を調べれば彼女の婚約者は優しい人ではなかったらしい。もしかしたらだが、そのこともあるから優しい人が良いのかもしれない。

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