【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「料理人が、最近は美味しそうに食事を摂ってくださると喜んでいました。しかも、顔を合わせればきちんとお礼まで言ってくださると。……そんなお方が、王都貴族にいたなんて……!」
「……一つ言うが、王都貴族にもシェリル嬢のような人間は、多分他にもいるぞ」
確かに、王都貴族はプライドが高く、辺境貴族を見下しているところがある。リスター辺境伯爵家も、面と向かっては言われないが、裏では「田舎貴族」と蔑まれていることを俺は知っているし、蔑んでいる家の正体も知っている。だが、行動をしないのはただただ面倒くさいから。争いになればあっという間に勝てるだろうが、無駄な血は流したくないのだ。
「庭師が、楽しそうに土いじりをしていらっしゃると言っておりました。虫が出ても、嫌がらずに生かしておくとか……」
「多分、それは虫がそこまで嫌いじゃないからだぞ」
「クレアとマリンも、仕えていて楽しいと言っていました」
「あの二人は、年の近い友人が出来たような感覚なのだろうな」
「メイドたちも、こんな素敵な人が奥様になってくだされば……と言っておりました」
「……もう、何も言うまい」
今まで俺の元に送り込まれてきた令嬢は、結構な問題児が多かったため、多分シェリル嬢のようなタイプが物珍しいのだろう。だが、ここまで使用人に好かれているところを見ると、少し興味が……って、ダメだダメだ。俺は十五も年下の少女に、恋など出来ない。
「……旦那様も、そろそろトラウマを乗り越えてはいかがでしょうか? そんな、たかが一度浮気された挙句、自分が捨てられたからと言って……」
「お前な、それをされた方がどれだけ傷つくか知っているか?」
「ですが、シェリル様も同じ境遇ですが、彼女は割り切っていますよ?」
「……」
確かに、シェリル嬢も同じ境遇らしい。しかし、彼女は悲しい表情一つ見せず、ここで生きようとしている。……そう考えたら、一つのトラウマを言い訳にして、結婚をしない俺の方がずっと子供ではないだろうか?
「ぜひぜひ、シェリル様との婚姻を真剣に考えてくださいな!」
サイラスは、そう言って楽しそうに笑う。……手のひらクルクル回しまくりだな。シェリル嬢も、戸惑うだろう。
(あのシェリル嬢という娘は、大層強いのだな)
あの美しい顔立ちで、俺よりもずっと強い。それは――理解できた。
「……一つ言うが、王都貴族にもシェリル嬢のような人間は、多分他にもいるぞ」
確かに、王都貴族はプライドが高く、辺境貴族を見下しているところがある。リスター辺境伯爵家も、面と向かっては言われないが、裏では「田舎貴族」と蔑まれていることを俺は知っているし、蔑んでいる家の正体も知っている。だが、行動をしないのはただただ面倒くさいから。争いになればあっという間に勝てるだろうが、無駄な血は流したくないのだ。
「庭師が、楽しそうに土いじりをしていらっしゃると言っておりました。虫が出ても、嫌がらずに生かしておくとか……」
「多分、それは虫がそこまで嫌いじゃないからだぞ」
「クレアとマリンも、仕えていて楽しいと言っていました」
「あの二人は、年の近い友人が出来たような感覚なのだろうな」
「メイドたちも、こんな素敵な人が奥様になってくだされば……と言っておりました」
「……もう、何も言うまい」
今まで俺の元に送り込まれてきた令嬢は、結構な問題児が多かったため、多分シェリル嬢のようなタイプが物珍しいのだろう。だが、ここまで使用人に好かれているところを見ると、少し興味が……って、ダメだダメだ。俺は十五も年下の少女に、恋など出来ない。
「……旦那様も、そろそろトラウマを乗り越えてはいかがでしょうか? そんな、たかが一度浮気された挙句、自分が捨てられたからと言って……」
「お前な、それをされた方がどれだけ傷つくか知っているか?」
「ですが、シェリル様も同じ境遇ですが、彼女は割り切っていますよ?」
「……」
確かに、シェリル嬢も同じ境遇らしい。しかし、彼女は悲しい表情一つ見せず、ここで生きようとしている。……そう考えたら、一つのトラウマを言い訳にして、結婚をしない俺の方がずっと子供ではないだろうか?
「ぜひぜひ、シェリル様との婚姻を真剣に考えてくださいな!」
サイラスは、そう言って楽しそうに笑う。……手のひらクルクル回しまくりだな。シェリル嬢も、戸惑うだろう。
(あのシェリル嬢という娘は、大層強いのだな)
あの美しい顔立ちで、俺よりもずっと強い。それは――理解できた。