【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】

「え、えっと、あのサンドイッチは……」

 このお店の食パンに挟まれているのは、たくさんのお野菜とベーコン。そのボリュームとか、綺麗な彩りとかを見ていると、あのサンドイッチが無性に食べたくなって。私は店員さんにお願いしてあれを二人分購入することにした。……お金は、ギルバート様持ちなのだけれど。

「ギルバート様。私、サンドイッチにしました」
「……そうか、他にも選んでいいぞ。持ち帰って、食べればいい」

 私の意見を聞いて、ギルバート様は少し口元を緩められてそうおっしゃってくださる。なので、私はほかにもいくつかのパンを購入することにした。持ち帰る分は、店員さんに専用の袋に入れてもらう。と言いますか、私街に来てかなり浮かれているわよね……? そう思ったけれど、その店員さん、女性の方は「伯爵様、楽しそうですね」なんて意外なことを私に耳打ちされてきた。……ギルバート様が、楽しそう?

「楽しそう、でしょうか?」
「はい、うちの店主とは古い知り合いですので、度々お店に来てくださっているのですが……。それでも、あんなにも楽しそうな表情を見るのは、初めてです。あと、女性を連れてこられたのも初めてです」
「……そうなのですか」

 店員さんにパンが入った紙袋を手渡され、私はそれを受け取る。紙袋の中には、持ち帰り用の袋に包まれたパンと、サンドイッチが入っている。……そう言えば、このパン屋は店内飲食がないのよね。近くの広場かどこかで、食べさせてもらえないかなぁ。
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