【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
 幸いにも、風はすぐに止んだこともあり、少し先で帽子は拾うことが出来て。……良かった。そう思って、私はホッと一息をつくけれど……そう言えば、ギルバート様が先ほど何かおっしゃろうとしていなかっただろうか?

「ギルバート様。あの、今、何とおっしゃろうとされたのですか?」

 ベンチに戻って、私はギルバート様にそう問いかける。そうすれば、ギルバート様は「……もう、いい」なんておっしゃって、残りのサンドイッチを口に突っ込まれていた。……ご機嫌、悪くされてしまった?

「あ、あの、私何かやらかしましたか……?」
「いや、違う。……俺の、タイミングが悪かっただけだ」

 私が恐る恐るそう問いかければ、ギルバート様はそっぽを向かれてそうおっしゃると、「食べたら行くぞ」と続けられた。……あ、私が食べ終わるのを待っていらっしゃるのよね。

「すみません、急いで食べますね」
「……急がなくてもいい。喉につめるぞ」
「そんな、子供じゃないのですから」

 その心配は、絶対に子供にするべきことだろう。私はこれでも一応立派な成人女性だし、そんなことはやらかさない。……初日に、胃が食事を受け付けなかったのは、もう笑い話になっただろうし。

(本当に、美味しい)

 心の中でそうぼやいて、私はサンドイッチをパクパクと口に運んで食べた。……やっぱり、美味しいなぁ。そう思ったら、自然と口元が緩む。そんな私を、じぃーっとギルバート様が見つめられていたことに、私は気が付かなかった。
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