【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「あ、だ、旦那様は、とてもお優しい人ですのでご安心くださいませ! ……その、ちょっと顔が怖いぐらいで……」
「冷酷な辺境伯だと、私は聞いておりますが……」
「……その噂には、ふかーい訳がありまして……」

 クレアさんが、私の耳に唇を近づけて何かを教えてくれようとした時だった。応接間の扉が勢いよく開き、クレアさんにそっくりな侍女が、現れる。いや、そっくりなんてレベルじゃない。瓜二つ。そのままだわ。

 その侍女のサイドテールは、クレアさんとは逆で左側だった。その大きな橙色の瞳は、とても愛らしい。しかし、今は眉を吊り上げており怒っているのは一目瞭然だった。

「クレア! 仕事をさぼって何をしているのよ! おかげでこっちは……あ」
「……どうも」

 クレアさんのそっくりさんは、私のことを見て「し、失礼いたしました!」と言って瞬時に謝ってくる。……謝らなくてもいいのに。そう思い、私が「お気になさらず」と声をかければ、彼女は顔を上げた。……見れば見るほど、クレアさんにそっくりだ。

「シェリル様。紹介しますね。こちら、私の双子の妹のマリンです。マリン、こちらはシェリル様。旦那様の元に嫁入りにいらっしゃったの!」
「……マリン、です」

 そう言ったマリンさんは、今度は落ち着いて一礼をしてくれる。なので、私も一応とばかりに「シェリル・アシュフィールドです」ともう一度自己紹介をした。

(双子だったのね。そりゃまぁ……そっくりな訳ね)

 クレアさんとマリンさん。二人は、見れば見るほどそっくりだ。そのサイドテールを解けば、きっとどちらがどちらか判別するのは至難の業だろうな。……いや、私は髪を下ろした姿を見たことがないので、何とも言えないのだけれど。

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