【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「わ、私、何か重い病気なのでしょうか……?」

 かみしめるように言葉を発し、ギルバート様にそう問いかける。すると、ギルバート様は「病気ではない、と、思う」と歯切れの悪いお返事をくださった。……なんと、はっきりとしないお言葉だろうか。もっと、明確におっしゃってくださればいいのに。

 私がそう思っていると、ギルバート様は「よく、分からないそうだ」と苦虫を嚙みつぶしたような表情で続けられた。……よく、分からない? それはいったい、どういう意味? いや、そのままの意味なのだろうけれど。

「あ、あの、それって、どういう……」
「かかりつけの医者は、『原因がよく分からない』と言っていた。ただわかるのは、体内にある魔力が枯渇寸前になっていたということだけだ。魔力が枯渇する病気は多々あるが、それではない可能性が高いということだ。……だから、はっきりとした病名は告げられない」

 そんなギルバート様のお言葉に、私は静かに息をのむことしか出来なかった。体内の魔力が枯渇すれば、意識を保つことが難しくなり、そのまま倒れてしまう。最悪の場合意識を失ったままになるとも言う。だけど、その場合はしっかりとした病名が付く。……原因不明なんて、本当に意味が分からないわ。

「……医者によれば、シェリル嬢の体内の魔力はとてもゆっくりと失われていたらしい。本当に徐々に失われていたため、今まで気が付かなかったのだろうという判断だ。……シェリル嬢、心当たりは?」
「ありま、せん」

 そんな、強大な魔法を使った覚えはない。それに、私は魔力なんて滅多に使わない。だから、私にはまったく心当たりがなかった。

「そうか。……まぁ、俺の方でもいろいろと調べてみよう。……あと、医者によればシェリル嬢はこれから五日間は絶対安静だ。いいな?」
「……はい」

 魔力なんて、そう簡単に回復するものではない。そのため、そのお医者様のおっしゃることは正しい。私はそう判断し、ゆっくりと頷いた。そうすれば、ギルバート様は私の頭に軽く手を置かれ、そのまま撫でられた。……何故、そうなるの?

「看病の方は、クレアとマリンに任せる。……シェリル嬢も、気心の知れた同性の方がいいだろう。……もしも、暇つぶしに何かが欲しければ遠慮なく言ってくれ。……出来る限り、準備をしよう」
「……はい」

 その申し出は、きっとギルバート様なりの優しさなのだろう。そう思って、私がギルバート様に笑みを浮かべて「ありがとうございます」と告げれば、ギルバート様は露骨に視線を逸らされた。……照れていらっしゃるの? まぁ、それを指摘する元気は今の私にはないのだけれど。
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