【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第27話 互いのこと
 そんなはずない。そう思い込み、私は必死に首を横に振る。そして、誤魔化すように「あ、あの!」と声を少しだけ荒げた。……こんなの、私らしくない。普段の私ならば、こんなことにはならないのに。

「ギルバート様のこと、教えてくださいませ」

 意識していることを必死に隠すように、私が声を大きくしてそう言えば、ギルバート様は「……具体的には、何が知りたい」とおっしゃる。そ、そうよね。もっと、具体的に訊かなくちゃいけないわ。

「で、では、ギルバート様の好物は……?」

 だったら、まずは無難なところから攻めるのが一番だろう。そう思って私が無難な質問を繰り出せば、ギルバート様は疑問を持たれた様子もなく、少し考えられたのち「がっつりといけるもの……だった、な」なんて過去形でおっしゃった。……何故、過去形なの?

「何故、過去形なのですか?」
「あのな、シェリル嬢。人間三十を過ぎたら衰えていく。もちろん、内臓も衰える」
「……ということは、昔は今以上に食べられましたの?」
「まぁな。今じゃ三分の二ぐらいにまで落ちたな」

 ……ギルバート様、今でもかなりの量を食べていらっしゃるじゃない。そう思ったけれど、ギルバート様がそうおっしゃるのならば、そうなのだろう。うん、きっとそうに決まっているわ。

「シェリル嬢の好物は、何だ?」
「……わ、私は、美味しくいただけるものならば何でも……」

 実家にいたころは、まともな食事を摂ることが出来ないこともあったので、私は食事に対するこだわりが薄い。美味しければ何でも好き、と言えるぐらい。……高級食材は例外だけれど。少し恥ずかしかったので、私が毛布で口元を覆いながらそう言えば、ギルバート様は「……甘いものは、好きか?」と問いかけてこられた。……甘いもの、好き。そう言う意味を込めて私が頷けば、ギルバート様は「そうか」と満足げに頷かれていた。
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