【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「……好きな女性のタイプとか、ありますか?」

 本当は、もっと直球に問いかけたかった。でも、そのまま問いかけるのは無理で。だから、私は少し言い方を変えて問いかけてみた。そうすれば、ギルバート様の目が大きく見開かれる。……そうよね、ギルバート様は大の女性嫌い。こんなことを訊かれても、困るわよね。

「……すみません。忘れて、ください」

 毛布に頭まで埋まりながら、私はそんなことを言って誤魔化す。あぁ、バカだ。いきなりこんなことを訊かれても、困るに決まっているじゃない。今の私、絶対に冷静な判断が出来ていないわ。もっと、冷静になりなさい、私!

「こんなこと、訊かれても困りますよね。……ギルバート様、女性嫌いなのに」

 そう言って、私は毛布をぎゅっと握り締める。バカ、バカ。本当にバカ。体調不良だからって、頭が回っていないからって、訊いていいことと悪いことがあるわよ。

「……シェリル嬢」
「お願いです、忘れてください」

 ギルバート様の、何処か不思議そうなお声が聞こえてくる。しかし、ギルバート様のお顔を見る勇気はなくて。私が毛布に埋まっていると、ギルバート様は「忘れるわけ、ないだろう」なんておっしゃった。……何故、忘れてくださらないの? 忘れてくださいよ、こんなこと。

「シェリル嬢。俺は多分、好きになった奴が好きだ。……あと、あえて言うのならば放っておけない女性だ」
「……放っておけない、女性」
「そうだ。ただし、シェリル嬢の様に芯のある奴だけ、だがな。いや、むしろシェリル嬢だけだ」
「……私だけ……」

 ……うん? それって、なんだかおかしくないだろうか? だって、これじゃあまるで――。

(告白じゃない!)

 私のことを好きだと言われているみたい。……一瞬そう思ったけれど、すぐに理解した。これは、都合のいい幻聴なのだと。
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