【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】

「……いや、原因はきちんと特定する」
「どうして、そこまで……?」
「シェリル嬢に元気になってほしい。ただ、それだけだ」

 私から露骨に視線を逸らされながら、ギルバート様はそんなことをおっしゃる。……私に、元気になってほしいから、か。

(クレアもマリンも、サイラスさんたちもそう言ってくれるのよね……)

 実家にいたころでは、考えられないほどの好待遇。でも、時々それが不安を呼ぶ。私は、こんなにも幸せでいいのだろうかと。本当のところ、私は出来た人間ではないし、普通に醜い部分も持っている。そんな私が、この家で幸せになっていいのだろうか。そう、思ってしまう。

(でも、やっぱり私はギルバート様のお側にはいられないわ)

 先日、ギルバート様に「側に居てほしい」と言われた。だけど、やっぱりそれは叶わないことだと思う。妻じゃなくてもいいと、おっしゃってくれた。だけど、それって結局……人には言えない関係に近しいということ。今みたいに、言葉にできない関係というだけじゃない。

「……ギルバート様」

 そう思ったら、無意識のうちに口はギルバート様の名を呼んでしまう。その声を聞かれたギルバート様は「……どうか、したか?」と不安そうにおっしゃった。その揺らいだ瞳を見ていると、どうしようもない感情が湧き上がってくる。……だけど、言わなくちゃ。私は、貴方の側にはいられないって。

「わ、私……ギルバート様の、お側には――」
「――旦那様!」

 私が、自分の気持ちを言おうとした時だった。お部屋の扉がいきなり開き、息を切らしたサイラスさんが入ってきたのだ。そのいきなりの光景に私が目を見開けば、ギルバート様は「……静かに入ってこい」と呆れたような声音でおっしゃった。

「……そうとも言っていられないのです、シェリル様の、シェリル様の魔力が枯渇しかけていた原因が分かりました!」
「……本当、か?」

 そして、サイラスさんはそう叫ぶと何かの資料をギルバート様に手渡されていた。
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