【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第30話 倒れた原因
 ギルバート様の目が、その資料を追う。その横顔を見つめていると、とても素敵だなぁなんて思ってしまう。それぐらい、私は呑気だった。どうせ、私が倒れた理由なんてそこまで肝心じゃない。そう、思っていた。でも、ギルバート様のお顔が見る見るうちに怒りに染め上げられていくのを見ると……私も、焦り始めた。

「サイラス、これは」
「はい、まぁ、簡単に言えば旦那様の想像されている通りでございます」

 サイラスさんとギルバート様が、何かをこそこそとお話されている。私だけが仲間外れというのは、気分のいいものではなかったけれど、この場合は仕方がない。そう思って、私は植物図鑑が山積みにされている机と違う方の机から、コップに入ったお水を取る。クレアとマリンが、喉が渇いた際にと置いて行ってくれたものだ。

「……シェリル嬢。聞いていて、かなり不快な結果が出てしまった。それでも、聞くか?」

 お水を飲んでいると、ギルバート様がそう声をかけてこられる。……不快な結果。だけど、私の実家の話以上に不快なことなど滅多にあるわけではないだろう。私はそう楽観視して、ギルバート様のお言葉にうなずいた。

「その、私の病状って――」
「――はっきりと言えば、これは病気の類ではない。まぁ、世にいうまじないの類だ」

 私の言葉を、ギルバート様が訂正される。……まじない? それは、呪いとか魔術とかそう言うことだろうか? そう思って私が目をぱちぱちと瞬かせれば、ギルバート様は「シェリル嬢の魔力が、自動的に他人に流れるようになっていたということだ」なんて続けられる。……人の魔力が、自動的に他人に流れるなんてことありえない。でも、何故だろうか。私には腑に落ちる部分もあった。

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