君はまだ甘い!
座敷には四人掛けのテーブルが二つ並べて設置されており、その一つに四人で座っていたが、キョロちゃんが「ここどうぞ」と自分の隣の座席の座布団をトントンと叩いた。
目がハートになっているのをマヤは見逃さなかった。

「お前、身長どんだけあるんだ?デカ過ぎだろ」

帝王が不躾に聞く。

「189センチですよ。バスケ仲間の間ではそんなに珍しくないですけどね。」

ニコッと微笑むその笑顔は、いきなりの反則級だと思った。
柔らかそうな短い黒髪は無造作に降ろされていて、幼さが強調されている。
まるでマンガに出てくる”爽やかスポーツマン”そのままを地でやってのける勢いだ。

そんなことを一人ぼんやりと考えていたが、ふと我に返ったマヤは、慌てて幹事としての自分に戻る。

「ルイは遅れるとのことなので、まずはこのメンバーで始めましょうか」

メニューを配ってドリンクを決める。

「生の人?!」

全員が手を挙げた。

マヤは呼び出しボタンを押して店員を呼ぶ。

「生5つ」

と注文した後は、続いて食べ物をメニューで探す。

適当に注文した後、すぐにビールが運ばれた。

「え~、コ、ホン。では、皆様本日は遠いところをお越しいただき、ご苦労様です。皆さんとの初対面を祝して、かんぱーい!」

生まれてこの方、乾杯の音頭なんてとるような立場になったこともないが、今日は念願の仲間たちとの対面、友人たちとの飲み会に、すっかり高揚して、これから始まる宴に期待を寄せながらジョッキを高く上げた。

その半分ほどを一気飲みしテーブルに置くと、皆の笑顔が目に飛び込んできて、程よい酔いと共に幸せな気分に満たされた。

すると、隣に座っている帝王が、マヤに向かっておもむろに言う。
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