君はまだ甘い!
「お前、思ったよりイイ女だな」
言葉だけ捉えると褒め言葉なのだろうが、和やかな空気に包まれ始めたこのタイミングに全くそぐわない、チンケなそのセリフに苛立ちしか感じない。
他のメンバーは戸惑った様子でただただ黙っている。
後でこっそり席を移動しようと、心の中で決めて話題を変える。
「キョロちゃんたちは明日は奈良のどの辺に行くの?」
「まだ決めてないんだけど、とりあえず、東大寺と奈良公園は行くよ」
「定番だよね。奈良駅周辺は観光名所が固まってるから、1日で回るならちょうどいいね」
「奈良に行くんですか?いいなぁ。オレもゆっくり観光とかしてみたいな」
トオルが空になったビールジョッキをそっとテーブルに置きながら、会話に入ってくる。
すかさずキョロちゃんがドリンクのメニューを差し出す。
「いい飲みっぷりだね。はい、どうぞ。トオルさんは今日帰っちゃうの?」
「ええ。明日、午後から練習なんで。せっかくプライベートでの大阪なのに、な」
いかにも残念、という顔をしながら伏し目がちに言う様子も実に絵になっている。
(何者だ、こいつは!)
マヤの元夫ヒロキも公私ともに認めるイケメンではあったが、どちらかというとクールな印象で端正な顔立ちだ。
しかし、トオルはわりと庶民的な顔立ちで、そのたれ目が温和な雰囲気を醸し出していたが、よく見るとひとつひとつのパーツが職人の手によって丁寧に型取られ、1ミリたがわず正確な場所に貼り付けられたような、いわば、作り物のような顔だ。
整っているけど常に微笑んでいるので、クールな印象は全くなく、むしろ、見る者全てをその魅力に引き込むようなオーラを放っていた。
言葉だけ捉えると褒め言葉なのだろうが、和やかな空気に包まれ始めたこのタイミングに全くそぐわない、チンケなそのセリフに苛立ちしか感じない。
他のメンバーは戸惑った様子でただただ黙っている。
後でこっそり席を移動しようと、心の中で決めて話題を変える。
「キョロちゃんたちは明日は奈良のどの辺に行くの?」
「まだ決めてないんだけど、とりあえず、東大寺と奈良公園は行くよ」
「定番だよね。奈良駅周辺は観光名所が固まってるから、1日で回るならちょうどいいね」
「奈良に行くんですか?いいなぁ。オレもゆっくり観光とかしてみたいな」
トオルが空になったビールジョッキをそっとテーブルに置きながら、会話に入ってくる。
すかさずキョロちゃんがドリンクのメニューを差し出す。
「いい飲みっぷりだね。はい、どうぞ。トオルさんは今日帰っちゃうの?」
「ええ。明日、午後から練習なんで。せっかくプライベートでの大阪なのに、な」
いかにも残念、という顔をしながら伏し目がちに言う様子も実に絵になっている。
(何者だ、こいつは!)
マヤの元夫ヒロキも公私ともに認めるイケメンではあったが、どちらかというとクールな印象で端正な顔立ちだ。
しかし、トオルはわりと庶民的な顔立ちで、そのたれ目が温和な雰囲気を醸し出していたが、よく見るとひとつひとつのパーツが職人の手によって丁寧に型取られ、1ミリたがわず正確な場所に貼り付けられたような、いわば、作り物のような顔だ。
整っているけど常に微笑んでいるので、クールな印象は全くなく、むしろ、見る者全てをその魅力に引き込むようなオーラを放っていた。