君はまだ甘い!
「トオルさん、お酒何にする?」

そうはいっても、マヤはイケメンには散々辛い目に合わされているし、『三日で飽きる』ことも心得ている。
十年前ならいざ知らず、今のマヤがさほど心を動かされることはない。
トオルにメニューを渡す。

「生でお願いします」

メニューは見ずに、ニコッと微笑むトオルと初めて目がバッチリ合った。
その圧倒的な破壊力を持つ笑顔から、思わず視線を逸らす。

この青年は人と話す時に相手の目を凝視する癖があるようだ。
その眼差しは穏やかでありながら、どこか相手の心の内を深く探るようで、こちらの秘められた感情や思考を見透かすかのようだ。

(ちょっと苦手かも…)

悪い人ではなさそうだが、人見知りで他人に心を開く事がなかなか出来ない自分とは真逆のタイプの彼に、若干の苦手意識が芽生えた瞬間だった。

その時、電話の着信音が鳴った。

トオルのスマホのようだ。
トオルは画面を確認すると、眉を顰め、ため息をついてから立ち上がった。

「ちょっと失礼します」

そういうと、部屋から出て行った。

トオルと入れ替わりに店員が料理を次々と運んできた。
トオルが部屋を出て行ったのを見送りながら、

「トオルさんて、めちゃくちゃカッコイイね!ビックリしちゃった」

キョロちゃんが目を輝かせながら言う。

「おいおい、だんなの前でそれ言う?」

帝王がツッコむ。三人が一斉にマックスを見ると、無表情でビールを呷りながら、スマホを操作していた。

すると今度はマヤのスマホから着信音が鳴った。ルイからだ。
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