君はまだ甘い!
ロビーにはいろんな格好をしたアバターがウロウロしており、あちこちでテキストチャットでの会話が飛び交っている。
ナンパっぽい内容のものもよく見かける。

自分のアバターには、プロフィールを貼り付けて誰でも確認できるようになっている。
もちろん、実名ではなく、ニックネームと、任意で居住都道府県、年齢などを表示させる。
マヤは、煩わしいナンパ除けとして、「40代」と年齢を正直に表示しておいた。
そうすれば、純粋にゲームを楽しむ者しか寄ってこないだろう。

とは言っても、いきなり誰彼にと自分から声をかけることはできなかった。
マヤはしばらく、本来の目的であるゴルフのプレーに集中していた。

ある日、一人のアバターが声をかけてきた。
マヤは、ある好きなアニメキャラの名前をニックネームにしていたので、それに喰いついてきたのだ。

「○○って、△△に出てるキャラやんな?オレも好き!」

いきなりテキストチャットで関西弁を打ってくる、「オレ」って言ってるから、男?

(ナンパ?年齢みろよ!)

と一瞬訝しんだが、そのお気に入りアニメの話ができるのがちょっと嬉しくて、

「そうそう。あれ面白いよね」

と当たり障りのない返答をしてみた。


結論から言うと、全くナンパなどでなく、彼は純粋に良きゲーム仲間となった。
二十四歳、ニックネームはルイ。
関西に住む会社員で、この時すでに交流していた数人の仲間と共にコースにでようとしていたが、対戦するためのメンバーが足りず、近くでポツリと佇むマヤのアバターに声をかけたのだった。
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