君はまだ甘い!
「え?あー、家庭教師。ユカの」
咄嗟に答えたが、目が泳いだのに気付かれたかもしれない。
「こんな遅い時間に?」
「今日は、こっちの都合で時間を変えてもらったから」
あくまで平静を装いながらも、靴を脱いで上がろうとするヒロキを全身でブロックする。
「リビングで勉強してるから。話ならここで聞くから」
ヒロキは明らかに怪訝な顔で、マヤとスニーカーを交互に見ていたが、ひとまず、といった表情で言う。
「用事は、まぁ、大したことやないねんけど。昔買った小説を久しぶりに読みたくなってんけど、どんだけ探しても下巻しかないねん。そっちの荷物に紛れ込んだかもしれん、と思ってな」
「無いよ。本は全部整理したから」
リビングの方を気にしながら、そっけなく返す。
「そうか」と、特にがっかりした様子もなく、続ける。
「それと、二人の電話番号も教えて。ユカももう中二や。スマホ持ってるんやろ?」
「私のは教えるけど。ユカのは、本人に許可をもらわないと…」
ユカは離婚の理由を知っている。
マヤと祖母が話しているのをこっそり聞いていたのだ。
小学生の時は何度かヒロキと面会交流をしたが、中学に入ってからは一切父親に会いたがらなくなった。
「許可も何も、親子やんか。それに…、ほんまはもっと大事な話がある」
そう言うと、右手で自分のうなじを摩りながら俯いた。が、すぐに意を決したように口を開く。
「オレら、もう1回やり直されへんかな?」
咄嗟に答えたが、目が泳いだのに気付かれたかもしれない。
「こんな遅い時間に?」
「今日は、こっちの都合で時間を変えてもらったから」
あくまで平静を装いながらも、靴を脱いで上がろうとするヒロキを全身でブロックする。
「リビングで勉強してるから。話ならここで聞くから」
ヒロキは明らかに怪訝な顔で、マヤとスニーカーを交互に見ていたが、ひとまず、といった表情で言う。
「用事は、まぁ、大したことやないねんけど。昔買った小説を久しぶりに読みたくなってんけど、どんだけ探しても下巻しかないねん。そっちの荷物に紛れ込んだかもしれん、と思ってな」
「無いよ。本は全部整理したから」
リビングの方を気にしながら、そっけなく返す。
「そうか」と、特にがっかりした様子もなく、続ける。
「それと、二人の電話番号も教えて。ユカももう中二や。スマホ持ってるんやろ?」
「私のは教えるけど。ユカのは、本人に許可をもらわないと…」
ユカは離婚の理由を知っている。
マヤと祖母が話しているのをこっそり聞いていたのだ。
小学生の時は何度かヒロキと面会交流をしたが、中学に入ってからは一切父親に会いたがらなくなった。
「許可も何も、親子やんか。それに…、ほんまはもっと大事な話がある」
そう言うと、右手で自分のうなじを摩りながら俯いた。が、すぐに意を決したように口を開く。
「オレら、もう1回やり直されへんかな?」