君はまだ甘い!
ルイは、チャットでの会話だけではあるが、ノリが良く、サバサバとした性格も垣間見れた。何より同じ関西弁ということもあり、マヤは親近感を覚えてすぐに仲良くなった。
その後、長く友人関係が続くことになる。

ルイに誘われて入ったグループと遊ぶのが、マヤの唯一の癒しの時間となった。
テキストチャットのやり取りから始まったグループでの会話は、次第に文字だけでは追いつかないほどの盛り上がりを見せ始めた。
やがて、スカイプを通じて話すようになり、それぞれの笑い声や感情がリアルに伝わり始めた。
やはりルイは実際の話し方もコテコテの関西弁で、男性にしては若干声は高めで明るい響きがある。
それに釣られて大阪人のマヤも、これまで隠していた大阪弁を遠慮なく使うようになった。

ちなみに、参加者のほとんどが顔出しNGの意向だったので、音声通話だけの会話であった。
もちろん、マヤも異論は無かった。
グループのメンバーはほとんどが二十〜四十代の社会人で、たまに学生も入ってきた。
女性はマヤともう一人だけで、”キョロちゃん”と名乗っていて、三十代らしく夫婦で入っていた。
それを聞いた時は、ヒロキと二人で肩を並べて、同じゲームに夢中になっていた日々を思い出し、少し胸が痛んだ。



ある日、いつものようにグループで遊んでいた時、ルイが一人新しいメンバーを連れてきた。

対戦するのにメンバーが足りなかったので、マヤの時と同様に、ロビー内で「釣ってきた」らしい。
画面上に現れたのは、昭和の名作『男はつらいよ』の寅さんを模しているアバターだった。

続いて、

「スカイプにも呼ぶわ」

とルイが何やら操作をして、ほどなく、

「こんばんは」

という、アバターの風貌のイメージとはかけ離れた、若い男性の声がスカイプ通話参加者全員の耳に届いた。






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